NDil-003「シェルター」




■「シェルター」桑島由一

「ミサイルだ」
核戦争に備えてシェルターを購入した尾崎は、
モニタの中で戦争が開始されていくのを目撃する。
崩壊していく都市、殺害される市民。
ネットを通して情報収集する彼に起こった出来事とは?

実在する地下核実験にインスパイアを受けて執筆された
表題作「シェルター」をはじめ、別名義で発表された
ショートショート五本を同時収録。


-本文サンプル-

「合衆国と連携して、これ以上の被害が出ないようにしなければなりません」
 被害、という言葉を聞いて僕は恐ろしくなった。そうだ、最初の着弾の被害を
メディアは伝えていない。さきほどの掲示板に戻ると、一つの動画がアップロード
されていて、それが物議をかもし出していた。
 僕もその動画をダウンロードし、メディアプレイヤーで再生させる。
 携帯電話のムービー機能で撮影したと思われる不鮮明な動画、その内容は
驚くべきものだった。街の建物が破壊され、人の身体がバラバラになって道路に
散らばっているのだ。たった十秒ほどの動画だったけれど、僕は言葉を失った。
 あれは映画のワンシーンである。九十六年のパニック映画で……。という意見が出た。
さらに、フェイクとして作られた悪ふざけである、という書き込みもあった。
 アマチュアレベルの合成技術なので、それを隠すために低画質に加工してある、
あのビルの影の角度がおかしいではないか、と彼は熱弁を振るった。
 いつの間にか、飲んでいたビールが空っぽになっている。僕はストックから新しい缶を
取り出してプルタブを開けたが、最初の一口を飲む前に気になる書き込みを見つけてしまった。
「動画の最後に、銃を持った兵士が映ってないか?」

「シェルター」より