0508

 久しぶりにサイトを更新した。
 昔書いたテキストなどを掲載したので、かなり
具合の悪い感じ(鬱々とした)になっている。
 僕のテキスト(や日記)は創作と実体験が交じり合っているので、
変に心配されたり勘ぐられても嫌だなぁと思うけれど、
まあそれはそれということで。
 結局、文字にしてしまった時点で、その意味合いは
変化してしまう。「悲しい」と書いただけで、悲しい
だけなのか、慰めて欲しいのか、しかって欲しいのか、
あらゆる種類の選択肢が言葉にぶらさがる。
 本当に気持ちを残したいのなら、文字にはしないことだ。
 胸の奥で、ずっと大切にするしかない。それで消えて
しまうような想いなら、その程度ということだ。
 そして、世の中はほとんど、その程度のことでできている。

 だが、その程度のくせに、それらは僕らの胸を痛め続ける。

テキスト 0508

「坂道」

 あの坂道を忘れない。
 きみと何度も歩いた、あの坂道。カラオケボックスと、楽器屋さん。
 きみが走ってくるのを、いつも見ていた。大勢の人の中でも、きみは
とびきり目立っていた。宝石は輝くから、だからすぐにわかるんだ。
本当に美しかったんだよ。僕はきみと恋人でいられることが幸せだった。
 誰かに見つからないように手をつなぐ。きみは大きな目で僕を見る。
 世界で一番素敵な瞳をしていた。唇のホクロに、内緒話みたいにして
こっそりキスをした。
 きみは早足で歩いて、次の場所へ向かう。僕は、それを見送る。
 もう二度とそんなこともないんだね。
 坂道は、あの頃と同じようにして存在している。きっと、消えることはないだろう。
 僕はそこに行くたびに、きみを思い出す。
 忘れることはできないんだ。そんなの、無理なんだ。
 僕はきみの名前を大声で叫んだ。みんな、一斉に振り返った。
 だけど、すぐにそれぞれの目的を思い出して視線を逸らす。
 忘れるだなんて、そんなの、無理なんだ。
 僕も僕の目的を思い出そうとしたけれど、そんなものどこにもなかったんだよ。
 ただ忘れられない坂道が、そこにあるだけなんだ。

テキスト 0508

「ブリスター」

 ブリスターパックに閉じ込めて、壁に飾っておきたい少女。
 は、大人になったらピアスをあけたいと、パーマをかけたいと、
髪を染めたいと言っていた。今、僕の知らない場所で、きみは、
そういった、ことをして、僕の、知らない、人間と遊び、僕の、
知らない、誰かに、抱かれ、僕の、知らない、女性に、なって、
いくの、だ、ろ、う。
 きみの面影は大空にはりつき、その重さで夜と悲しみがやってくる。

 もうどこにも行く場所なんてないんだ。
 僕はタバコに火をつけて、頭がおかしくなるぐらいに吸い続けた。

テキスト 0508


「スイッチ(ラジオ2)」

 誰かが言う。スイッチは一人様、おひとつまでです。新しいスイッチが
ご入用の方は、古いスイッチを捨ててください。

 僕は壊れたスイッチを持ったまま、どこにも行けずに泣いている。
 つまり、虚構。空洞。スイッチオン。オフ。

テキスト 0508
 
「バスルーム(ラジオ3)」

 バスルームの掃除をした。排水溝が詰まっていて、お湯が上手く
流れていかなかったからだ。僕としてはそれほど気にならなかった
ので、そのままでもよかった。
 水が流れないなら、流れるまで待っていればいいだけだ。

 だけど、新しいなにかを迎えるためには、詰まっていたものを取り除かなければならない。
 僕は排水溝を洗って、全てをあらいざらい流した。

 こんなふうにして、とくにきらめきのようなものもなく、9月の終わりに
僕の28歳が始まる。

テキスト 0508

「死」


 人は死ぬ。おそらく、誰もがその宿命からは逃れられない。
 ただし、例外はある。

 知られないこと、だ。

 誰かが死んだとして、それを僕が知らなければ、その相手は
永遠に生き続ける。今頃なにをしているんだろうと、想像の
中で彼(彼女)は健やかに暮らす。
 つまり僕は、彼女の死なんて知りたくなかったのだ。
 それほど親しいわけではなかったけれど、友人の死というのは
とても辛い。ただ僕は現実感が欠如しているのか、いまひとつ
実感がわかない。

 そんなわけで、友人の死は僕の生活の中に静かに溶け込み、
ある瞬間、途方もない悲しみを連れて突然現れる。
 木の陰から子供を脅かすみたいにして、それは突然やってくる。

 抗えない。だから、僕は誰かの死なんて知りたくない。
 みんな、僕の知らない世界で永久に生き続ければいいんだ。

テキスト 0508

「好きなタイプの女の子」

 僕の好きな女の子のタイプというのは、あまり他人に
わかってもらえないのだけど(デビュー当時の裕木奈江
といっても最近通じなくなってきたし)、とりあえず主張したいことがある。

 僕は女の子の「うっしっし」という顔が大好きなのだ。
 例えば笑顔でもいい。なんかいいことがあって「うっしっし」と笑う顔、声、とても素敵だ。魅力的だ。
これが「うふふ」とか「おほほ」だと、なにも感じない。うっしっし、なのだ。
 笑顔じゃなくてもいい。ワルダクミをしている時の「うっしっし」でもいい。なにを企んでいるのだろう、
と考えると胸が高鳴る。なるべくその時の企みはくだらない方がいい。
あまりにもズル賢い高度な「うっしっし」はいらない。適度なものでいいのだ。
 似たようなものに「うぇへへへへ」というのもある。
 なんだかスケベなおじさんが、OLのパンチラを見たような感じであるが、まさにそんな調子の
「うぇへへへへ」がいい。

 この前、久しぶりに僕ごのみの「うっしっし」という笑い声を聞いて、その女の子に惚れた。
それを本人に伝えたら「意味がわからない」とバッサリ言われた。そうか、わからないか。
 その時の「うっしっし」は「(今日お買い物しちゃったよ、)うっしっし」というものであったけれど、
今年聞いた中で最高の「うっしっし」だったと思う。トロヒーあげたい。トロヒー。

テキスト 0508

「あなたはかわってしまったのね」

 好きなアーティスト(漫画、小説、音楽、映画)が変わっていく時の悲しさというは、
妄信的でなければ誰もが経験していることだろう。
 ある日であった彼(彼女)の作品。ショックを受け、素晴らしいと感動し、ショップに走り消費し、
彼(彼女)の作品によりそうように暮らし、夢中になり、追いかける。
 そういう幸せな日々は長くは続かない。いつか「なんか違うんだよな」と思う日がくる。
 結局、一生付き合えるアーティストに出会えることは奇跡のようなものだと思う。
 対象の彼(彼女)が同じことばっかりやってると、あきてしまって「ちょっとね」となるだろうし、
彼(彼女)が新しい方向に進むと「昔の方がよかったね」となるだろうし。
 こういうのって男女の恋愛に……にてない。別物だ。
 話をそらすのはよそう、アーティステックな話だけで終わらせよう。これは恋愛論ではない。

 結局は送り手も受け手も人間であり、常に変化しているわけだ。その中で同じ作品でも捉え方も違うし、
好き嫌いもその時によって変化する。
 つまり、大好きだったアーティストが色褪せてしまったことに落胆することはない、ということだ。
たまたまそれは、彼(彼女)とあなたの波長がずれた、ということであって、彼(彼女)とあなたの
関係性が終了したということではない。
 世の中には無限とも思えるほどのアーティストがあるのだから、少し浮気をしておけばいいのだ
(これが恋愛と違うとこだ!)。
 そしてしかるべき時を経て戻ってくればいい。それでもしっくりこないなら、また他の世界へ向かえばいい。
 結局、一度出会って好きになったアーティストとは「別れ」のようなものはない。
終わってしまったような関係性でも、実は心の底で、ずっと静かによりそってる。

日記 0508

 夜から渋谷で顔合わせがあったので、その前にHMVでやるMTVのインストアライブにいってみる。
 お目当てはラムライダー。整理券がないと入れないらしくて、遠くで見るかなーと思ったら、
なんだかんだで中に入れた。
 よく知らなかったんだけど、MTVの公開録画だったらしく、カメラがまわってた。ぐるぐる。
 全部でアーティストは三人。トップバッターに ラムライダー先生。ユメデアエルヨとベッドルーム
ディスコとミュージックの三曲を生バンド(ドラムがいた!)でやっていた。驚いた。
 こうやってみると、普通のバンドみたいだ! クラブっぽくねえべ! 
 そう、ユメデアエルヨの「太陽を撃ち落せ」の時に、昔のラムライダ先生は指をピストルの形にして
「ズキューン」ってやってたのに、この前はやんなかったなー。ガッカリだなーと思ってたら、
今回はちゃんとやってた。あれ好き。
 隣にいたラムライダファンらしき女の子もピストルやってた。この人、いい人(全然知らない人だけど)。
 彼女は、ミュージックの時の「パンパンッ」って手拍子もやってた。この人、RRM(ラムライマニア)と見た。
 次に出てきたのはレゲエの人(名前わからない)。レゲエは乗り方がわからないので、
うーうーと困ってる うちに終了。最後にアコースティックギターのインスト二人組みが出てきた。
これがよかった。渋い。ナイス。

 HMVから出てレコ屋さんを少しまわってフラフラしてから仕事の顔合わせ。
初対面の人に、妙なサービス精神を出して裏目に。よくないよね、三十近い大人の下ネタってサ。
 これからは上品に、とらでぃしょなるにしようと思いました。

 そんな一日。

日記 0508

 そういえば、昔、小学生が集まるチャットに行って「おれ、宇宙人なんだ」って言って
二時間ぐらい話したことある。
 信じる子と信じない子が半々で、中には「この人はきっと本物の宇宙人なんだよ!」って
擁護してくれる女の子とかがいた。

Q:宇宙ではどんな格好をしているんですか?
A:だいたい半そでです。

Q:宇宙ではなにを食べているんですか?
A:パピコとか?

Q:宇宙人と地球人の違いはなんですか?
A:スイカに塩かけて食べると即死


ビール片手に、子供に夢を与えていた俺。

テキスト 0508

「レッツラドンのコーナー」

 オイラ、クワシマってんだ。あやしいもんじゃないよ。
 オイラ、町のみんなは嫌いなんだ。
だってオイラのこと嘘つきって言うからさ。でもオイラ嘘なんてついてないぜ。
 確かに見たんだ。あの夜、空にでっかい文学が飛んでるのをさ。もちろんオイラだって文学が
とっくに絶滅したなんてことはしってるさ。 だけど、ハッキリと、確かに、この目で、見たんだ。
 文学を食い物にしてるメディアとか流行ならオイラの魔法で避けられる。
 あとはあんたの勇気次第だよ? それじゃあ冒険の旅に出発だ。レッツラドン!