日記 040720



 人とコミュニケーションが取れないから、写真を始めた。
日記040721



 ホルガ。落ちこぼれくん。最近あんま使ってない。

日記 040722



 僕は一人でショーウインドウを見てる。
 横にきみはいない。僕の心はカラッポ。
 ウインドウの中のショールームダミーズが僕を見てる。
 彼らだって夜にはガラスを破って動き出すんだ。
 ウイ スタト トゥ ムーブ
 ダミーズだって踊りだすのに、僕はまだ眠ることもできない。
 きみのことを思って、ずっと、とどまりつづけている。

日記 040723

 みなさんお久しぶりです、桑島由一です。
 だいぶ心も体も弱ってしまって、しばらく寝込んでたりとか走り回ったりとか(その場で)、
なんか色々大変でした。つうか、今も大変は大変です。
 ただ、あまりにもサイトを置いてけぼりにしてしまい、これはいかんということで
再開(になるのだろうか)します。今は一言でいうと、人寂しいです。好きな人に会いたい、
マリリンに会いたい、死んだら驚いた、ハンコ押してくれよ、という感じです。なにがなんだか。
 サイト、えーと、ようやくリニューアルしました。まだ工事中ばかりですが、
なにか見にくいなどがありましたら言ってください。僕は気にしませんから。

 6月の25日に南青山少女ブックセンターという僕の小説が発売されたのですが、
今月、偶然にも似た名前の本屋さんが閉店してしまいました。
 なんというか、ビックリですね。なんかしらないけど、そのドサクサで売れればいいなと思った。
 さすがにそれはちょっと、あくどいか。考え方。

 というわけでこれからもよろしくお願いします。僕は僕の愛を生きます。わお。

日記 040724

 とにかく仕事に集中するために、色々試している。外部の音をある程度遮断する
という、BOSEのクワイエットコンフォート2というヘッドフォンを買った。四万もした。
 もちろんお金はないからカード。無計画に。でもそれぐらい今、すがりたい感じなのです。
 結果はまだわからないけれど、これで少しでも効率があがるといいなと思った。なのです。

日記 040726

 栄養ドリンクとかビタミン剤とかにんにくの錠剤とかでなんとか動かしていた
体が止まった。倒れてて起き上がれなかった。なにもできへんかった。
 時間が過ぎていく。ああ。携帯メールの返事さえ打てなかった。ごめんなさい。

日記 040727



 下北沢で出会った犬さん。写真撮らしてもらったけど、嫌がってた。
 本当は二匹いた。飼ってるおばちゃんはボウズ頭の僕がカメラ片手に
近づいていっただけで、ちょっと怖がってた。
 「写真撮っていいですか?」
 と、カメラを間に挟んで人とコミュニケーションを取ることで
人見知りがなおればいいなと思っている。わんわん。

 カメラは衝動買いに近かったけれど、ちゃんと僕には写真を
撮る目的があるし、いい感じのができればいいなあとも思ってる。
 技術的なことはサッパリわからないし、素人丸出しの写真ではある
けれど、そういうのはあんまり僕には関係ない。それぞれ人にはカメラを
持つ理由があるということだ。
「モテるため?」と悪意を持って言う人もいるけれど(コスプレイヤーさんの
エロい写真を撮るためではなくて)、コミュニケーションツールとして
切実に必要だったことなんて、あなたにはわかるまい。そもそもモテねえし。
 ひとまず、2つの目的があってカメラを買った。いっこは、上記の理由。
 もういっこは、秘密。

日記 040729

 シルバーアクセサリーをずっと探していたのですが、とあるお店でようやく
欲しいかたちのを発見。どうもオープン初日だったようで、人がたくさんです。
 まあ、別に関係ないやと思いながらアクセサリーを購入。そしたら店員さんが一言。
「よかったですね。今日はビルがきてますよ」
 ビル。いきなりビル。誰だ、ビル。たぶん外国人だということはわかるけれど、
なんでビルの話を突然するのだ。
「ほら、ビル」
 そう言って写真を見せてくれた。写真では、その店員さんと、モノゴッツイ体格の
よい、ハーレーとか乗ってそうな外人さんが仲良く肩を組んでいた。
 こいつだ。ビル、こいつだ。そう、そこで僕は悟った。ビルは、このシルバーアクセの
ブランドのデザイナーなのだ。今日はショップオープンの日だから、
はるばる海外からやってきている。そのビル目当てで、人がたくさんいたわけだ。
「じゃ、ビル、呼びますか?」
 いや、待ってくれ。呼ばれても。そんなデカくてゴツいビルを呼ばれても困るから。
 僕はただ、欲しい形のアクセサリーがたまたまそのお店にあったから、そこで買い物を
しただけなんだ。ビルを呼ばれても、僕はビルについても知らないし、そもそもブランド名さえ
言えないっていうのに。そんなことがビルにバレたら殺される。きっと。
 振り向くと、デカそうな外人さんが、他の店員さんと話している。逃げなくちゃ。あの
ビルが僕に気づくまえに逃げなくちゃ。そうしないと、僕はビルと肩を組んで写真を
撮らなくちゃいけなくなるかもしれない。いやだ。知らない外人さんとのツーショット、
嬉しくない。でも、せっかくだから捨てられない。どうしよう。ビル、ああ、あんたが憎い。
「あ、あの、ぼく、今日は時間ないんで」
 そう言って逃げようとすると、店員さんが一言。
「明日は他のショップにいますから、明日でもいいですよ?」
 ああ、明日もビルが! 僕に! というか、この店員さんも、よかれと思って言って
くれているのだ。だけど僕は、ビル、知らねえし。興味ねえし。つか怖いし。
「いや、ビル、いいんで、僕、帰りますんで」
 僕は帰った。ダッシュで逃げた。

 というわけで僕は、見ず知らずの外人さんと、肩を組んでツーショット写真を
撮っていたかもしれないのだ。怖い話である。でも、よくよく考えると、そんな写真を
一枚ぐらい持っていてもいいかなと、ちょっとだけ後悔していたりもするのであった。

日記 040730

そのいち

 オーバーサイズの洋服を着ていると、服屋さんの呼び込みの黒人さんに
よく声をかけられます。いつもは適当にあしらっているのですが、その日は違いました。
「おにーさん。かいもの……? はぁ。まあいいや……」
 黒人さん、あきらかにテンション低い。おかしい。普段なら「ヘイブラザー!」って
感じなのに。僕はどうしたのだろうと思って声をかけます。
「なに、どしたの。元気ないじゃないのさ」
「うん。暑くて死にそう。もう、いい」
「なんで。頑張ってよ」
「頑張ってるよ。でも暑い。今日はもう。うん、いい」
「いや、客引きなんだから。もっとテンションあげないと」
「ううん。だってもう。暑くて……」
 こんな弱気な客引きさん初めて見ました。面白かったので、お店まで行くことにします
「とりあえず見るだけってことで店いくよ」
「え? うん。いいよ。うん」
 これは、こなくてもいいよ、なのか、OKなのか微妙な「いいよ」でした。
 彼に連れられて狭い店に入ると、店内には誰もいませんし、BGMもかかっていません。
 普通、こういう店って大音量でHIPHOPがかかっているものだと言うのに。
「はぁ。暑いよ。疲れたよ」
 弱音を吐く黒人さん。目が死んでいます。
「なになに。つうかプライベートでなんかあったんじゃないの?」
「プラ? うん、ないよ。大丈夫だよ。お兄さん優しいねえ」
「いや、そういう商売トークはいいから。安くして」
「うん。じゃあ8500円のコレ、7000円でいいよ」
 わりと安くなった。たぶん、本気で弱っているのです。レジで会計する時に、
思い出したかのように店内BGMをかけはじめました。音量は小さめです。
「まいど。じゃあ頑張ってね」
「うん。ありがとう。ちなみに、いくつ?」
「僕? 33歳だよー」
 33歳で真夏の炎天下の中ストリートに立ち、十代の若者に声をかける黒人さん。
 たぶん彼はHIPHOPとか、そんなに好きじゃないんだと思います。なんとなくだけど。

そのに



 代々木公園で、スーパーモンキーズを今風にしたような女の子(人?)たちが
ラジカセに合わせて歌って踊っていた。肌を露出した彼女たちは、いわゆるR&B系の
女性シンガーみたいな格好をしていた。肌を黒く焼いて、髪の毛を編んでいた。
 胸を強調した衣装のせいか、男性客が集まっていた。僕もしばらく見ていたけれど、
トラックも歌もダンスも、特別ここで見なくてはならない、というものではなかった。

 そのすぐ横に、一人の男性がいた。二十代前半であろう彼は、真面目そうな顔立ちで
メガネをかけていて、シャツにネクタイをしめていた。彼の目の前にはスネアドラム(小太鼓)
がひとつだけ置いてあった。彼はドラムスティックを握り締めていた。足元には、ポカリスエット
のペットボトルが置いてあったけれど、中身が茶色だったので、麦茶かなにかなのだろう。
 彼はヘッドフォンで音楽を聴いている。そして、その音楽に合わせて歌いだす。
「あいーなーてー、いまはねごーねごーしそーげー!」
 叫びに近い歌声。なんだかよくわからない。音楽に合わせてスネアを叩いているのだけれど、
ヘッドフォンで音楽を聴いているので、お客さんにはそれが合っているのかどうかもわからない。
 ただ彼は炎天下の中、歌う。
「しーそげーいまーねごーねごー」
 それがミスターチルドレンの曲だと気づくには数分かかった。
 彼はミスチルをヘッドフォンで聞きながら、それに合わせて歌い、スネアを叩いているのだ。
 それからしばらく見ていたけれど、一曲終わると麦茶を飲んで、また同じことの繰り返しだった。
 目的はあるのだろうか。ゴールはどこなのだろうか。僕は夢中になって見ていた。
 そのすぐ横で、ダンスチームのお姉さんがユーロビートに合わせて踊る。クライマックスだった
ようで、「みんなも一緒に踊ってー!」と叫んでいる。その音に、男性の不安定なスネアの
音が重なる。

まとめ

 僕は、あのダンスチームと、スネアの男性のどちらがリアルなストリートかと言えば、
迷わず後者だと答える。そして、暑さでまいっていた黒人さんの客引きも、リアルな
ストリートだ。

 僕らはリアルの中で生きている。日本のストリートは、そういう場所に存在している。
 日本にはレイブカルチャーもクラブカルチャーもHIPHOPカルチャーも存在しない。
 ただ、それらを根付かせようと頑張っている多くの人たちがいる。
 しかし、そのような人たちの前でも、本当にリアルなストリートの人々は、圧倒的な
興味を僕に投げつけてくる。

ちなみに、秋葉原の町も一時期リアルだった。今は、ほんの少しだけ虚像が混じっている。
 いや、そもそも、十年も経てば全てが虚像になるのだろう。だとしたら、
僕らはその中で、嘘っぱちでやけっぱちのリアルを感じればいいのだ。

日記 040731




 うちの猫であるところの765さんことナムコさんが骨折をした
らしくて入院してます。すごくかわいそう。今も狭いオリの
中で寂しくしているかと思うと泣きそうです。でもまあ、結構
楽しくやってんだろうな。あいつのことだし。
 とはいえ、やはり、あー。悲しいですね。早く元気になって
貰いたいものだ。愛着、というのはこういうことか。


 最近ライトノベルに関して色々な意見(?)があるみたい
だけれど、そんなの人それぞれなのだから、自分の思ってる
ライトノベルを読んで、書いて、いれば、いいと、思います。
 僕はテクノが大好きで、それが自由な音楽だった時代から
商業化されて標本化されて体系化されてクラシックになって
羽根をもぎとられる様子をリアルタイムで見てきたわけだけれど、
まあ、それと関係なしに音楽を作り続けた人々もいるわけで。
 そういうのと同じ感じがする。ようするにムーブメントとかカテゴライズ
というものは、いかにユーザーの手に取りやすいようにするかの
方法のひとつなのだから。手に取った後はユーザーが思考して選択
するのだと思う。僕はただ、色々と考えながら本を書いている。


 ところで僕には愛してやまない素敵な女の子がいるのだけれど、
髪の毛を切ったらモデルさんみたいになって驚いた。
 かわいいかわいいと思っていたけれど、美人という線でも
ありなのだなと思った。どっちにしろ素敵だ。ラブだ。大ラブだ。
 彼女の笑顔は僕の欠けている部分を、ゆっくりと温かい
スープのようなもので埋めてくれるので幸せだ。もちろん上手く
いくことばかりではないし、むしろその逆のことの方がおおいけれど
(僕はまったくもってヤキモチヤキだからです)、
一秒でも長く彼女の笑顔を見ることができればいいなと思ってる。

 僕だって色々と辛い恋愛をしてきたり、それなりに幸せな時間を
過ごしてきたり、まあ、なんだかんだであったけれど、今、この
瞬間、すごく心地のいい女の子と過ごすことができるという事実は
大切にしたいものだ。と、心が言ってる。そう、言ってる。

 結婚したいなあと思う。
 作家の先輩が「結婚してからが大変なのだぞ」とおっしゃっていたけれど、
きっと、ずっと大変なんだろうなあ。それでも僕は、彼女と一緒にいたいよ。